CASUCA

傷の輝き

一般的にジュエリーをイメージするとき、鏡面のごとく一分の隙もないほど綺麗に磨き上げられた貴金属、 そうでなければ格調高くてゴージャスなものですが、私が魅力的だと感じて来たものはそうではない、密やかで、主張はしないけれど存在感があって、でも妙に印象的で…、
身に着ける人に寄り添い、少しだけ気持ちを上げるナチュラルメイクのような微かなジュエリーでした。

CASUCAというブランド名の由来は、この「微か」という日本語の響きと、スペイン語で「あばら家」という意味を持つ言葉を重ね合わせたものです。

CASUCAがあばら家を意味する言葉だと知った時、同時に思い出された子供の頃とても大切に感じていた気持ち…
友達と放置されている空き家に基地を作って自分だけの宝を隠していた思い出。ガラクタや、角が丸くなって落ちていた綺麗なガラス瓶のかけらや、 不思議なカタチの石など、もう記憶の彼方に消えかけていたそんなたくさんのはぐれものたちが子供ながらにとても愛しく思えた…、そんな記憶。

朝露に濡れてキラキラと輝く蜘蛛の巣とか、母の鏡台の引き出しの奥から出てきた、置き去りにされていた古びた指輪や壊れた腕時計。使い込まれて傷ついているけれども磨くとその傷は独特なカットを施したようにキラキラと輝く、そんなものたちに出会える感動。

そんな思いをジュエリーに託せたら…

人はたくさんの経験をして、身も心も傷を負い、はたまた皺も寄ってきて、だけど、そのすべてを年相応にチャーミングに見せ、変えていくのはその人自身のチカラだと感じています。

シンプルでありきたりなネックレスチェーンに少しだけカットを足して光の反射を多くしたり、職人さんにモチーフの上からアブストラクトな傷を刻んでもらって、そこがキラキラチラチラとした輝きを放つように工夫したり、形は単純でも、その不思議な輝きで、印象的な存在感を残す。

それがCASUCAのジュエリーです。

昨年2020年は、私たちがこれまでに経験をしたことのないような大変な年となりました。

そして世界中の多くの人たちがその大きさは違っても身体や心に痛手を負い、辛い日々を送ることになりました。

だけど、私たちはお互いに気持ちを通い合わせ、支え合っていくことによってしかこの難局を乗り越えていくことはできないと思うのです。

私たちが受けたとても大切な傷を無駄にするどころか輝きに変えていきたい。

そんな思いを込めて、私はこれからもジュエリーを創り続けていきたいと思っています。

安野ともこ